本番の恐怖との対峙 アレクサンダー・テクニークとの出会い

あがり症・緊張

学生時代、人生の中で1番長い時間をかけて練習し、初めてシンフォニーでトップ奏者を務めた思い入れの強い曲があります。
当時、自分の中では1番ハイトーンも楽に出た時期で、楽器での演奏のコントロールも比較的しやすかった時期。
何十回と出てくるハイトーンもtutti中ではほぼミスすることもなく、仲間にも「百発百中だね!」と言われていたほど完成度は高くなっていました。
迎えた本番、百発百中だったハイトーンの命中率は3割にも満たず、あまりの緊張で身体は締め付けられ、まともに吹けないままソロだらけの曲を80分過ごしました。ページをめくるたびに現れるソロは拷問のよう‥。
こんなに頑張ってきたのに‥

それ以来、客席にいても舞台の感覚を思い出しては脈が上がる。さらには合奏中でも緊張に支配されて吹けなくなる。
悪循環で自分の音をまともに聴けなくなりました。
ついに、オケのトランペットをやってる資格はないんじゃないだろうか、というところまで行き着きました。目立ってなんぼの楽器をやってるのに、ほんの一瞬のソロもまともに吹けない‥。本番も練習も心から楽しめない。苦しさばかり募ってきていました。

そんな時、バジル先生の最初のレッスンを受ける機会に巡り会えました。
初めて受けたアレクサンダー・テクニークのレッスン。なんだかよくわからないけど、目の前で他の受講生の方の音がどんどん変わっていく。
しかも、ごく短時間で。
聴講しているだけでも、どんどん自分の中に熱い気持ちがたぎってきたのを感じました。
何が起こっているんだろう‥

いざ自分がレッスンしていただけることになった時、ひどい緊張に悩んでいて、どんどん吹けなくなっていることを相談しました。
じゃあ、その緊張しているところを一回見せてもらいましょう!ということで、他の知らない受講生の方がいる中、また極度の緊張感の中、なんとか吹きました。
さらに本番の緊張感と近くするためか、大きな拍手をいただき静まり返った後ひとりだけで吹くという当時の自分にとってはとんでもなく緊張が高まるシチュエーションを作られたのです。(ひどい。笑)
一回吹き終わった後、バジル先生からアンブシュアのアドバイスをいただきました。
バジル先生が最近特に力を入れて研究されているアンブシュアタイプに基づいたアドバイスです。
「次やるときは、頭が動いて身体全部がついてきながら、アンブシュアの動きのことを考えてやってみて。」
わけもわからず無我夢中にその動きと演奏をやってみました。周りの受講生の方がうんうんと頷いているのが見えましたが、自分では変化はあまりわかりません。
ただ、アドバイスいただいたことを考えながら、その動きをすることに必死になりました。その時、なぜか最後までなんとか吹けたということは、自分にとってはとても大きな変化だったと記憶しています。(この頃特に、自分の音をまともに聴くことができず、1フレーズ最後まで吹くことができなくなっていたからです)

その後、再度アンブシュアモーションに関するレッスンを再度受講でき、アンブシュアモーションがぴたっとはまった時に、びっくりするくらい簡単に音が出る体験をしました。
本番まで3ヶ月、バジル先生のアドバイスに従って、日常生活の中で本番のことを考えるたびに、そのプランのことを考え続けました。

迎えた本番、途中で何度か緊張に飲まれそうになりながらも、自分がやりたい音楽と、その時のプランを明確に指示を出しながらやり切りました。
恐怖感もありましたが、本番のドライブ感というのでしょうか、ネガティヴな恐怖ではなく、音楽に対してまっすぐに思いを持ってポジティブに本番ができたのです。
こわかった‥けど、すごく楽しかった‥!
初めての感覚でした。
本番での緊張はパワーに変えられる、自分でプランを持っていれば緊張しながらも演奏のパワーとすることができるということを本番の舞台で体験。
十数年、低迷し、前を向けなかった自分がようやく道が開けたような感覚がしたのです。

アレクサンダー・テクニークを意識して取り入れるようになってから、普段指導をしている高校生たちにもどんどん良い効果が現れ始めました。
演奏の自由度がどんどん広がっていくような感覚です。ひとりひとりのレベルもどんどん上がっていくのを感じました。副次的ではありますが、コンクールの結果としても現れてきました。
3ヶ月間、BodyChanceのベーシッククラスに通っていましたが、教師養成コースへの転向を決めたのもこの頃です。
専門的に学び始めて1年と半年ほど経ち、自分でも指導の質が格段に変わったことを実感しています。

そんな私が名古屋を中心とした東海地区において、音楽を愛する人たちのために何か役に立ちたいという願いが強くなっています。

その中のひとつがレッスンのご提供であったり
学校吹奏楽の指導です。

音楽を愛する人たちがより自由に柔軟に音楽を楽しんでいけるよう、今後も活動していきます。