管楽器のためのブレス徹底解説⑤知識編【脚が管楽器の演奏に深く関係するお話】

呼吸

以前の記事はこちらから

呼吸解説シリーズ

第1弾: 管楽器のためのブレス徹底解説①導入編【呼吸プチクイズ4選】

第2弾: 管楽器のためのブレス徹底解説②準備編【息を吸う体の仕組みをひも解く】

第3弾: 管楽器のためのブレス徹底解説③知識編【息を吸う時に起きる動き】

第4弾: 管楽器のためのブレス徹底解説④実践編【息を吐く時に起きる動き】

 

【疑問】脚と楽器の演奏は関係があるのか

トランペットやクラリネットみたいな管楽器を演奏するときに、あしが関係あるって聞いたことがあるけど、どういう意味だろう…?座ってても関係あるの?

「脚を使って!」って言われたから、太ももに力を入れてみたけど、これでいいのかな…?

 

演奏する際に脚を使ってみて!と言われたことがある経験がある方も多いと思います。

そのアドバイスをもとにスッとうまくいった方はラッキーかもしれません。

一方で、イマイチわからず困る方もいるかもしれません。

 

中学時代、楽器を吹くのには脚を使うんだぞ!と先生がおっしゃったのです。

「へー!」と思って私が実際に試したみたことが「脚にぐっと力を入れること」でした。

音が安定したような、でも吹きづらくなったような

私の場合は、そもそも「使う」ということがどういうことかわかりませんでした…

 

中学生だった当時の私は、脚にギュッと力を入れることが楽器で脚を使うことなんだ!と理解したのです。

 

振り返ってみると、あの時は的外れた理解をしていたなと思います。

 

脚を含めた途端、吹きやすくなった私の経験談

アレクサンダー・テクニークを学んで変わったことは数え切れないほどありますが、今回の記事の内容を深く探求していったことで私自身は吹奏感が非常に大きく変化しました。

平たく言ってしまうと、 めちゃくちゃ吹きやすくなった!! ということです!

以前よりも自分でバランス調整できるようになってきて、呼吸筋が働きやすい状況になったんだと理解しています。

 

言葉の曖昧さ

上記の例のように「脚を使う」にはいろんな意図が含まれていて曖昧さもあります。

  • ある人は、足の裏をしっかり地面につけるかもしれません。
  • 他の人は、足の裏にギュッと力をいれるかもしれません。
  • また他の人は、ももの裏をイスにしっかりつけることを考えるかもしれません。

 

曖昧さは時に誤解を生んだりしますが、可能性も広げてくれるものです。

今回は「脚を使う」という言葉の可能性を考えていきます。

 

管楽器演奏における脚の重要性【呼吸との関わり】

この記事では、演奏における脚の重要性について解説をしていきます。

 立奏でも座奏でも、脚はとても重要な役割を果たします。 

 

また、管楽器奏者にとっては特に興味深い話題かと思いますが、脚は呼吸と大きく関わりがあります。

つまり、 脚の使い方次第で呼吸が変化し、呼吸が変化するから音も変化します。 

 

次のセクションでもう少し具体的に解説していきます。

脚と胴体の関係性で呼吸が大きく変わります

「脚を使う」と一言で言っていますが、もう少し細分化すると 「脚と胴体の関係性」が非常に重要だと考えています。 

今回、脚単体の使い方の話よりは、どちらかと言えば胴体と脚の関係性の話をしていきます。

 

 

 

股関節の動きやすさが演奏に深く関わる【呼吸も変化します】

胴体と脚をつないでいる大きな関節は股関節こかんせつです。

 

体のデザインの勉強をする前の話です。

恥ずかしながら、私は股関節をずいぶん勘違いしていました。

 

人間の体をこんな感じで理解していたんですね。笑

いろいろとツッコミどころのあるヘンテコなイラストですが、注目したいのは脚が胴体にぶっ刺さっているところです。

人間のシルエットを考えると、 確かに脚が胴体に刺さっているように見えるのですが、これは大きな勘違いです。 

 

【ボディマッピング実践編】股関節の位置を知る

  1. イスに座ります。
  2. つま先を地面につけたまま、ひざを上にもっていくようにしてかかとを浮かせてみてください。何度かかかとを地面につけたり浮かせたりしてみます。その時、上体がかがんだり後ろにそったりしないよう、胴体はそのままの位置で安定させておいてください。
  3. かかとを浮かせたり地面につけたりすると、胴体と脚の角度が変わるのがわかるかと思います。胴体(骨盤)と脚でつくられているのが股関節です。

*下の図では、かかとが浮いていますが、上体が安定していればこれでもOKです。

 

骨格図でも股関節の位置を確認してみます。

 

 

 

さらに詳細な位置をマッピング

「腰の骨のでっぱった部分と恥骨結合のあたりを結んで、その真ん中より少し奥」というマッピングも良いと思います。

 

ふとももの表面が曲がると思いがちです。もっと深い部分、下の写真のように、座っている場合は意外とイスに近い部分に股関節が存在します。

 

毎日使っている働き者インナーマッスル【大腰筋】

脚と胴体をつなぐ、大きな筋肉が大腰筋です。

 

大腰筋は深い部分にある筋肉(インナーマッスル:深層筋)です。

上体と脚の間を曲げるために使う大きな筋肉で、背骨と脚の骨(大腿骨)についています。

 

インナーマッスルは筋肉を使っている感覚が少ない(固有感覚が少ない)と言われています。

つまりどういうことかというと、毎日毎日使っているのにあんまり使っている感がないということです。

朝ベッドから起き上がるときも、外に出て歩くときも、寝転がろうとする動きのときも使っています。働き者です。

 

この筋肉、 背骨のたくさんの部分にくっついていることが図でみてわかる と思います。

 

胸椎12番(上から12番目の胸の背骨)と5つの腰椎(背骨の下の方の腰の骨)です。

注目したいポイントはいくつかありますが、ここでは2つ取り上げます。

【ポイントその1】横隔膜に影響する可能性があること

胸椎にはあばら骨(肋骨)と関節をつくっていて、肋骨には吸う時に使う筋肉のひとつである横隔膜も付着しています。

 横隔膜のすぐ近くに付着している大腰筋は、呼吸へなんらかの影響を与える可能性が高いと考えています。 

 

【ポイントその2】背骨全体(軸)への影響が大きいこと

背骨の動きが呼吸に大きく関わってくることは、過去の記事でもご紹介しています。

背骨の下部にこんなに大きな筋肉がついているということは、 この筋肉が使われることで背骨への影響が大きいことが考えられます。 

 

ほんの2例を取り上げましたが、 体全体はつながりをもって影響し合っているということをいつも考えておきたいし、そのつながりの中で全体のバランスを調整してくれるというすばらしい機能を人間は備えています(自然美!!) 

 

【まとめ】脚と胴体の関係性は呼吸に影響する

今回は知識編ということで、脚と胴体の関係性について解説をしました。

次回は実際に楽器を吹く時に具体的に取り組める内容を紹介していきます。

ぜひ、楽器を用意して試していただければと思っています。