指揮を振る時の動作 長い時間の指揮でも疲れにくい腕の使い方研究【知識編】

指揮

指揮者ってあんなに腕振って疲れないの?

テレビでも生演奏でも、指揮者が熱く指揮をする姿をみてこんな疑問をもつ方も多いのではないでしょうか。

私は小さい頃、合唱団に所属していた時期があったのですが、合唱団の先生の指揮をみて母が一言。

A先生、あんなに腕振ってえらくないの?

*注意:名古屋弁で「えらい」は「疲れる」という意味です。

その当時私は9歳でしたが、
先生が腕をぶんぶんしているところを見るたびに、私も同じようなことを不思議に思っていました。

この記事でわかること

  • 長い時間の指揮をする人向けた、疲れにくい腕や肩の使い方のヒント
  • 指揮者が鍛えていくポイントを解剖学的な観点で解説

私は幸い、何人もの指揮者の先生から直接指導を受ける機会に恵まれ、本当に幸運でした!

その中で、よくいろんな先生方がおっしゃっていた 【指揮筋】について、今回解説をしていきます。 

また、トレーナーさん向けのレッスンをする中で、 肩のあたりの違和感の相談がダントツで多かった ため、この点を基礎練や実践も含めて解説していきます。

指揮筋の役割を解説【実践できる基礎練つき】

指揮で使っている腕の筋肉について解説

腕の構造の理解を深める

私の尊敬する指揮の師匠である角田先生から教わっていたときのことです。

もう10年も前の話になりますが、先生がおっしゃった言葉がとても印象的で、今でもはっきり覚えています。

「これが指揮者の筋肉なんだよね」

「ここが使えるようになってきたら、長時間振るのがずいぶん楽になったよ」

先生がその時に指差した指揮筋を私なりに紐解いて解説していきます。

腕には腕橈骨筋わんとうこつきんという筋肉があります。この筋肉は主にひじを曲げるための筋肉です。

 この腕橈骨筋わんとうこつきんが指揮者の先生方がおっしゃっている【指揮筋】の主役です。 

下の図の青い部分が腕橈骨筋です。

@Thank you for visiblebody

図で見てわかる通り、他にも腕の筋肉はたくさんあります。

 

腕橈骨筋は自分の意思で使うのが難しい筋肉のひとつ

肘を曲げる筋肉なのに、なんで自分の意思で使うことが難しい筋肉なの?

私もこれが長らく疑問でしたが、今回やっとこの疑問が解けました。

一般的に筋肉にはこんな傾向があります。

  • 皮膚の表面に近い部分にある筋肉(アウターマッスル) … 短い時間で強い力を発揮する
  • 体の深い部分にある筋肉(インナーマッスル)     … 持久力が高く疲れにくい

今回紹介した指揮筋である腕橈骨筋は、前腕の筋肉の中でも1番表面にある筋肉です。

つまり、短い時間で強い力を発揮する筋肉です。

ビールジョッキを持ち上げる筋肉⁉️

 腕橈骨筋の独特の性質としてこんなおもしろいものがあります。 

  • 負荷のかからない肘を曲げる動作ではほとんど働かない
  • 負荷のかかる緊急時に働くために、emergency muscle(エマージェンシーマッスル:緊急時の筋肉)とも呼ばれている
  • 筋肉の構造上、親指が上を向いている時に強力に働く筋肉なので、【ビール持ち上げ筋】という異名がある…(❗️)

【参考文献】肉単(ニクタン)語源から覚える解剖学英単語集[筋肉編]

エマージェンシーマッスルビール持ち上げ筋⁉️
とてもおもしろい異名がついている筋肉です!

日常生活で肘を曲げるくらいではあまり使わない筋肉

つまり普段はあまり使う機会がないのですが、 指揮をするときにはとても大切な役割を果たします。 

意識的に筋肉を起こしてあげないと、いざ指揮をしようというときにこの指揮筋が働いてくれず、 それを補おうとして肩や腕の他の筋肉を過剰に使う結果となって疲れてしまう 可能性があります。

どうやって意識的に鍛えていくか【具体的なトレーニング方法】

ビールの大ジョッキ🍺で鍛えるのもいいかもしれませんが、笑

今からすぐに取り組める方法をお伝えします。

指揮筋トレーニング 基礎編
  1. 肘を90度くらいに曲げて、親指を上に向けます。また、人差し指から小指も自然に曲げておきます。
  2. 重い机などのフチに人差し指をひっかけて、上に持ち上げようとします。
  3. ①ぐっと持ち上げて②ゆるめて を繰り返してみてください。
  4. 持ち上げる動作の時に肘の内側に浮かび上がってくる筋が腕橈骨筋です。

  *机がない場合、反対の手のひらを使うのも良い手段です

指揮筋トレーニング 応用編
  1. 肘を90度くらいに曲げて、親指を上に向けます。また、人差し指から小指も自然に曲げておきます。
  2. 重い机などのフチに人差し指をひっかけて、上に持ち上げようとします。
  3. ぐっと持ち上げようとし続けて、机から人差し指を外します。
  4. 反動で腕が上に上がったら、すぐに腕全体を脱力します。

継続的なトレーニングが必要

前述の通り、指揮筋の独特の性質もあり、意識的にトレーニングすることがとても大切になります。

かく言う私も、試しに左手でトレーニングしてみたところ、指揮筋にほとんど意識がかよっていなくて愕然としました…

でも思い出してみると、右手もこのトレーニングを継続する前は左手と同じような状況だったのです。

意識的に左手のトレーニングを続けていこうと思っています。

肩の違和感【腕と肩の構造の勘違いが多い】

ここから話題が変わって、肩付近に感じやすい違和感をひもといていきます。

さて、前回も登場したキャラクター(?)です。

私が書いた人間のイラストです。前回の脚と同様、胴体に腕がささっています。笑

【腕は胴体の横にくっついている】というようなイメージをしている方はとても多い印象です。

腕と肩の構造を理解する

上のイラストの例は極端ですが、腕を動かすということを、以下のように「肩とひじと手首が曲がる」と理解している方は多いのではないでしょうか。

かつての私もそういう理解をしていました。

ここに、肩の違和感のワナが潜んでいます。

腕はもっともっと動くことができる

 腕を作っている骨格を知ることで、今よりもっと腕が動かしやすくなる可能性があります。 

*骨の名前は覚える必要はありませんが、今回は説明の都合で書いていきますね。

腕のつながりはこのようになっています。

  • ①鎖骨  と ②肩甲骨 が関節をつくっている
  • ②肩甲骨 と ③上腕骨 が関節をつくっている

ポイント1 ③上腕骨は胴体に直接くっついていない

腕の骨は胴体にくっついてそうなのに、直接胴体についているわけではありません。びっくり超重要ポイントです。

ポイント2 胴体と関節をつくっているのは①の鎖骨のみ

腕の関する骨たちのうち、胴体と接しているのは①鎖骨のみです。つまり、腕の付け根は①鎖骨ということになります。鎖骨の付け根以外は直接関節をつくっておらず、肩甲骨も筋肉の上に浮いているような感じです。こちらもびっくり超重要ポイントです。

この関節のつながりを知って指揮を振ってみるだけですでに変化があるかもしれません。

【知識編】まとめ

今回の記事では、主に以下3点に取り組んできました。

  • 指揮筋【腕橈骨筋】の特性を知る
  • 指揮筋の具体的なトレーニング方法
  • 腕の骨格の仕組みを知る

次の記事では、今回の内容を活かした実践編として解説していきます。

  • 腕の可動域をひろげるエクササイズ
  • 肩の違和感が大きい方向けのヒント

指揮を振る時の動作 長い時間の指揮でも疲れにくい腕の使い方研究【知識編】を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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やってみたけどよくわからなかった方、もっとつっこんで聞いてみたい方、ぜひどうぞ!